2015年4月より乳腺甲状腺科を開設しました。当科は、患者様を中心として院内の複数部門の皆様と密に関わるチームを形成することで、より質の高い診療を実現しています。今回は外来診察を中心に、どんなことをしているのか、をご紹介します。
1)乳腺の診察
現在、日本女性は生涯で13人に1人が乳癌に罹患し、その好発年代は40~50歳代、すなわち、働き盛りで社会やご家庭で最も必要とされる女性の年代です。また、女性乳癌の約1/100の頻度で男性乳癌も存在します。症状の約90%は乳房のしこりですが、しこりを触れなければ病気は無い、というわけではありません。欧米では、乳癌罹患は増加し続けていますが、マンモグラフィを用いた乳癌検診を開始後、死亡率は明らかに低下しました。これは、診断技術や治療薬の進歩とともにマンモグラフィによって癌の早期発見が可能になったから、と考えられています。
図1.圧迫の強弱による
マンモグラフィの腫瘤の写り方の違い
マンモグラフィは、他のレントゲンとは異なり、乳房を引っ張りだして圧迫しつつ極力薄く進展させて撮影をします。乳房内にできた癌のしこりと、正常乳腺はよく似た白さとして写り、その濃度差は非常にわずかです。濃度差を見やすくする技術として考案されたのが、マンモグラフィの撮影方法です。実際に圧迫の強さを変えて撮影してみると、不十分な圧迫では、あるはずの癌が見えにくくなってしまいます(図1)。痛みゼロの検査ではありませんが、撮影にはぜひご協力ください。
乳腺超音波検査(エコー)も大切な検査です。年代別のマンモグラフィを見ると若い方ほど乳房内に乳腺が密度高く残っており、全体が真っ白になってしまって内部がわかりにくく、癌を見落としてしまう危険性が高いことがわかります(図2)。このような方には、さらに、エコー検査を追加することで的確に病変を確認することができるようになります(図3)。
外来では問診、視触診に続いて、上記検査に所見があれば細胞や組織を採取して確認する検査(生検)を行ないます。さらにMRI、CTなどを追加して詳細を調べて行きます。
図2.年齢変化による、乳腺密度と
マンモグラフィの変化
図3.乳腺超音波(エコー):乳癌
2)甲状腺の診察
図4.甲状腺ホルモンによる症状
甲状腺とは、首の気管の前面にある蝶々のような形をした臓器です。甲状腺ホルモンという、全身に作用するホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンが分泌過剰の場合と、分泌低下の場合の症状をご覧ください(図4)。甲状腺ホルモンの働きとは全身を元気に活性化していること、とわかります。
ただし、これらの症状は他疾患においても出現しますので、症状だけで甲状腺疾患と決めつける事はできません。
甲状腺の病気には2種類あります。一つ目はホルモン分泌量が異常増加、または低下する病気(機能異常:バセドウ病、橋本病など)、二つ目はしこりを形成する病気(腫瘍:良性腫瘍や癌など)です。このため診断には採血検査と、頸部超音波検査(エコー)によるしこりの有無の確認が欠かせません。機能異常の場合、健康によかれと思って摂取されている健康食品やサプリメントが悪影響していることもありますので、詳細な問診も行ないます。さらに、細胞を採取して確認する検査(生検)、CTなどを追加することもあります。
甲状腺疾患は圧倒的に女性の罹患が多いですが、頻度は低いものの男性にも認められます。甲状腺の腫れなど、気になる場合はぜひ受診してください。
3)受診の場合は
予約の無い初診の方も診察しますが、予約の方を優先に診察しておりますので若干の待ち時間が発生します。当院は近隣の医療機関とも密に連携しており、事前の診察予約やセカンドオピニオンも受付けております。ご希望の場合は、どうぞお問い合わせください。
診療担当医のご紹介
鈴木やすよ
略歴
1989年 |
藤田学園保健衛生大学医学部卒業 |
同年 |
浜松医科大学耳鼻咽喉科教室入局 |
1990年 |
浜松医科大学第一外科教室入局 |
1991年 |
藤枝市立志太総合病院外科 |
1993年 |
神奈川県立がんセンター乳腺甲状腺外科 専門研修 |
1996年 |
浜松医科大学第一外科医員 |
1997年 |
札幌医科大学外科学第一講座研究生 |
2008年 |
札幌医科大学外科学第一講座助教 |
2010年 |
北海道立衛生学院看護学科講師 |
同年 |
札幌医科大学外科学第一講座兼任助教 |
2012年 |
札幌医科大学外科学第一講座助教 |
2013年 |
聖隷浜松病院乳腺科医長 |
2015年 |
すずかけセントラル病院 |
資格
日本外科学会専門医
日本乳癌学会専門医・指導医
日本内分泌外科学会登録認定医
乳房再建用エキスパンダー/インプラント基準責任医師
日本乳がん検診精度管理中央機構 検診マンモグラフィ読影認定医師
日本乳がん検診精度管理中央機構 乳がん検診超音波検査実施・判定医師
役員
日本乳癌検診学会評議員
日本甲状腺外科学会評議員
日本乳がん検診精度管理中央機構 マンモグラフィ部門読影委員